赤字国債:子供のツケで酒を飲んでいる親みたい?

電車に乗っていたら、

赤字八百兆円、子供のツケで酒を飲んでいる親みたいじゃないか

という朝日新聞のポスターみて無性に腹が立った。

個人が金を借りたら、死ぬまでには返さないと道義に反するが、国家は基本的には死なないし、返済期限が来ても借り換えてしまえばよい。その間に経済を発展させ、経済規模が大きくなれば相対的に国債発行額は小さくなるし、無理して返そうとすると経済が疲弊しそこに住む国民が死んでしまう。

これは歴史が証明しており直近では小泉・竹中政策。

国家の役目はそこに住む国民を豊かにすること。

国民を殺してまで負債を返すなどそれこそ道義に反する。

http://d.hatena.ne.jp/tadasi-i/20091214/1260804771

 この人もいっているように、国債とは総需要の調節であって個人レベルの借金とは根本的に質が異なる。国債を買っているのも、ほとんどは国内の企業および自国民であり、「政府の借金」ではあっても「日本国民の借金」ではない。長期金利が云々という言葉だけで目が点になってしまう自分でも、これくらいのことは理解しているつもりである。だから、「赤字八百兆円で子供がなんとか学校に通えている」というのが、正しい表現である。

 しかし朝日に限らず、赤字国債発行を「子供のツケで酒を飲んでいる親みたい」といった表現で批判する人はたくさんいるが、ではその人たちは一体どうしろと言っているのだろうか。消費税を上げて高齢者にも緩やかに課税し、世代間で連帯して負担を分かち合おうと言っているならわかる。しかし、そういう真っ当な議論に行く人は少数である。むしろマスメディアは、税金の無駄遣いが多いとか、公務員の給与水準が高すぎるとか、何の根本的な解決にもならない問題に世論を誘導してきたのではないだろうか。

 その結果として、財源問題は何一つ前に進まず、現場の官僚や議員は、後期高齢者医療制度のようなやたらに複雑な制度によって財源を工面したり、そして最終的には国債発行に頼ったりするしかなくなるわけである。しかも、このことが政治と行政に対する不信を一層悪化させるという、悪循環に陥っている。朝日新聞は、そうした悪循環に自らも加担したという自覚が少しでもあるのだろうか。

 行財政改革も急がなければならない。私たちは、行革を断行することで、税率の引き上げを小幅にとどめる余地が出ると主張してきた。特殊法人の整理を進める一方、旧来型の公共事業を大幅に削減するなど、歳出構造を変革すべきだ。

 そうした努力もなしに「まず五%あり」では、住専で税金の使い道に腹立ち、関心を深めた納税者は納得しないだろう。(朝日新聞社説、1996年5月12日)

 朝日新聞がこう言っていたのは13年前になる。それから少子高齢化は急速に進み、公共事業もかなり縮小し、医療や介護の現場の財源不足は耐え難いほどに深刻化し、行政でも「官製ワーキングプア」が登場しているくらいなのに、大多数の世論は13年前の朝日新聞と何一つ変わっていない。正直、どこまでやれば「納税者は納得」するのだろうか、という気分になる。行政そのものが実際に崩壊するまで「納税者は納得」しないとしたら、これほど恐ろしいことはない。

 さすがに朝日も、北欧・西欧の「福祉国家」が消費税が高い事実を無視できなくなり、数年前くらいから消費税増税をこっそり言い始めたが、今更何を言っているのかという感じである。


09総選挙 消費税 増税論議をすみやかに

 「国のかたち」を決める大事な論戦が低調なまま、総選挙の投票日がやってこようとしている。消費税の増税問題である。

 自民党民主党も、高齢社会のなかで今後膨らみ続ける社会保障財源として、消費税率引き上げが必要になることは認めている。ならばその見取り図を有権者に示すことが政権を争う政党としての責任のはずだ。

 ところが両党とも総選挙の争点から外してしまった。これは国民にとっても不幸なことではないか。

 政府の推計では、いま年間90兆円の社会保障給付費が2025年には140兆円に膨らむ。年金や医療、介護の水準を下げる選択肢がないとすれば、財源を税や保険料で確保していくことが政治のつとめである。

 増税は不人気な政策だ。だから消費税の歴史は歴代自民党政権にとって試練の連続だった。79年に大平内閣の一般消費税構想が挫折。89年に竹下内閣が消費税を導入し、97年に橋本内閣が税率5%にした。その代償は、いずれも国政選挙での大敗だった。

 近年の自民党政権は「歳出の無駄削減が先」という大義の陰で、消費増税の試練から逃げてきた。小泉首相は「自分の任期中には消費税を上げない」と宣言。安倍、福田、麻生の3首相は税制抜本改革の目標時期を設けたが、在任中は増税しないという「先送り」策を続けた。

 民主党鳩山代表は「4年間は消費税は上げない」と公約したが、それも逃げ口上のように響く。

 両党が消費税をタブー視するのは世論の増税批判を恐れてのことだろうが、国民の方はどうか。

 朝日新聞が今月中旬に実施した世論調査では自民、民主両党の公約を実現するための財源に83%の人が「不安を感じる」と答えた。

 予算の無駄を省けば財源が泉のようにわいてくるというものではなく、「埋蔵金」頼みや増税先送りでは済まないことを、有権者はとっくに見抜いているのではないか。

 もちろん、実際に増税するのは世界経済危機の克服後でなければならない。だが、どのくらいの規模の増税が必要か。消費税は複数税率にするのか、といった議論も早い段階から積み重ねておく必要がある。

 その場合、税源の中核である所得税法人税、消費税のあり方を全般的に見直す必要はある。それにしても増税論議の中心となるのは、やはり税率5%と主要国のなかで際だって低い水準の消費税だろう。税収が景気にあまり左右されずに安定しており、社会保障財源に向いていることもある。

 新政権は、歳出の無駄減らしを進めるとともに、税制抜本改革の議論にすみやかに入るべきである。

朝日新聞社説8月27日)