過剰に年金問題に関心を持ち過ぎ

 これも何度も書いていることだけど、年金問題を年金の細かな仕組みをいじくって解決してもさほど意味がない。これは強調してもし過ぎることはない。

 年金制度の健全さや持続可能性は、経済成長と雇用水準、出生率などなどに全面的に依存している。今の年金制度に何か問題があるとしたら、雇用が不安定かつ劣悪で年金を払う余裕がない、老後のことなど考えられない、という若い世代が増えていることが第一義的な問題であって、「損だから払いたくない」などというのは、自分から言わせれば擬似問題(そう言えば取りあえず払わない「言い訳」になるというだけ)である。あえて乱暴に言えば、安定した経済成長を実現して充実した健全な雇用が提供されれば、今言われている年金問題の9割方は解決するのである。それに加えて、年金だけに生活を依存しなくて済むような社会政策(住宅補助など)が施されれば、さらに望ましい。

 しかし、年金制度に対して「若い世代が損をしている」と言いたがる人が、なぜだか少なくない。そもそも、年金は「年寄り」のために存在する制度だし、人口構造や経済水準で格差が生じるのも、年金制度である限りは(積み立て方式であっても)そもそも回避できない問題だろう。何で年金の世代間格差を問題にする人は、「若い世代の社会保障も充実させろ」と主張する前に、年金制度の細かな仕組みを懸命にいじくろうとするのかが、よく分からない。そんなことが、不安定で低賃金な雇用に苦しむ若い世代にとって、どれほどの意味があるというのだろうか。

 今の日本の世論は、高齢世代の声が強くなったということもあるのだろうが、過剰に年金問題に関心を持ち過ぎだと思う。そもそも、今の日本の根本的な問題が、そんなところにあるとは思えない。