財政危機ファシズム

 ひょっとしたら、菅直人あたりを経済音痴と罵倒している人たちは理解できていないのかもしれないと思ったのだけど、税金を上げるというのは、民主主義的な手続きで分配するお金を増やす、民主的な手続きを通じて、市場では対応しきれない社会的弱者向けの分野に必要な分配を行うということあって、官僚の裁量に委ねるということとイコールではない。

 そして増税というのは、負担が増えるというよりも負担の配分を変えて社会の安定化をもたらすための手段である。例えば介護を民間企業にお金を払って買うよりも、普段税を少しづつ払って必要になったときに無料でサービスを受けれるようにするほうが、社会的なリスクが低く、市場経済の信頼性をも高めることができるようになる。

 これを理解したうえで、政治的なタイミングがよくないとか言うのならまだわかるが、どうも理解すらできていない人が「経済に詳しい」人たちにも多いんじゃないか、という気がしてきた。理解していれば、菅直人を即座に経済音痴と罵倒できるわけがないからである。


 でも相変わらず増税についてとんでもない誤解を撒き散らす人が多いことも確かで・・・。

「景気が悪くなったらどうなるんだ」という声もあるかとは思うが、
財政の持続可能性という重大問題を前に、そんなみみっちいことを
気にする必要はない。

 (中略)

というわけで、道は二つしかない。これだけの負担をするか。
それとも、医療、年金といった 社会保障自体にも大きくメスを入れるか。
まずはこの現実を直視することが議論の第一歩となるだろう。

http://blog.goo.ne.jp/jyoshige?sess=3a9d7d218af275689332d42b3db29211


 「財政危機」を錦の御旗に立てて、大増税を迫るか社会保障を大幅に減らすかを迫るという、まさにこれ以上ない最低最悪の増税論である。「財政危機」のまえに国民は苦しい生活を我慢しろという、まさに「ほしがりません勝つまでは」の「財政危機ファシズム」としか表現しようがないだろう。「社会主義」というのは、本来はこういう人にこそふさわしい表現である。もちろん極論として言っているのかもしれないが、こうした議論は、税を通じて豊かで安心できる社会を再建するという、至極真っ当な議論を妨げてしまう。そして、マスメディアで流布している増税論が、これを少しばかり上品にしたものでしかないから頭が痛くなる。そして良心的な人ほど、こうした議論に日々接して増税に批判的な態度をとらざるを得なくなってくるわけである。


 ちなみに、「増税」についても「インフレ目標」にしても、あるべき社会をつくるための手段でしかない。個人的には、専門家の意見をいろいろ眺めて、増税インフレ目標も断固やるべきという主張に賛成しているけど、それは若年層を中心とする社会保障・雇用保障があまりに手薄であることが、現代日本社会によこたわる問題の根本だと考えているからである。「増税」や「インフレ目標」自体が政治的な争点になるのは、仕方ないといえばそうだが、基本的には不健全である。