消費税の政治学

 ヨーロッパが消費税中心主義になっていった背景にはいろいろがあるが、政治的な理由を忘れるべきではない。

 第一には「納税者の反乱」である。つまり、1970年代に福祉国家の完成によって「失業しても食っていける」社会となると同時に、「脱工業化」のなかで大規模な雇用そのものが困難になると、構造的な失業者が大量に増えるようになった。それにつれて、現役労働者が福祉のための高い税負担に反発するようになり、これ以上税金が増えるなら福祉サービスを切り下げるべきだという声が、急速に強まっていくことになる。

 第二には、外国人労働者流入である。彼らは低賃金労働者が多く、所得税を払ってない人の割合も高く、住民税も出身国で納めていることが多いが、福祉サービスは多数の国民とそれほど変わらない水準を享受している。このことに対する多数派国民の感情的な反発が、ヨーロッパにおける「ショービニズム」の背景にあることは、周知の通りである。

 実際、ヨーロッパ諸国では以上のような不満が深刻な社会的亀裂を生んだという、苦い経験がある。こうした不満を抑えて社会保障の水準を維持するためには、失業者も外国人もそれなりに高い税金を払って福祉サービスを受けているんだ、という政治的な正当化が必要なる。その結果、住民税や所得税よりも消費税のほうが、より正当性を調達しやすい方法として採用されていったのである。確かに少し逆進性は高まるかもしれないが、国民が税金を払わなくなってしまい、社会保障が財源不足で崩壊するよりはるかにいい、というのがヨーロッパ諸国の指導者たちの常識的な判断だった。

 税金を払わない人は福祉サービスを受けるべきではない、という論理そのものには必ずしも賛同はしないが、税負担と福祉をあまりに切り離すと「納税者の反乱」を生み出しやすいという現実は確かに存在している。消費税に反対し、所得税相続税だけで対応すべきだと主張している人たちが経済の専門家と思しき人たちにもいるが、こういう現実についてはどう考えているのか不明である。

法人税を下げ消費税10%超」 新党改革・舛添代表
2010/5/8 2:42 http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C889DE2E4EBEAE7E7E1E2E2EAE2E7E0E2E3E28297EAE2E2E2;at=ALL

 新党改革舛添要一代表は7日、福岡市内で講演し、同党の基本政策に掲げる税制改革に関し「世界の流れは法人税を20%台にして、消費税を10%以上にするというのがトレンドだ」と述べ、法人税減税とセットで消費税率を10%以上に引き上げるべきだとの考えを明らかにした。

 また他の第三極の新党勢力との連携を念頭に「参院選でなんとか共闘を築いて、第2幕、第3幕と続けて最終的には政界再編を起こす」と決意表明。「新党が乱立することで民主党を利することにはならない」と強調した。