消費税引き上げ示唆: タイミングがあまりに悪すぎる

行政刷新相「消費税上げ、11年度税制改正で」

 仙谷行政刷新相は6日、東京都内での講演で、今年末までに決める2011年度税制改正で、消費税率引き上げを含む税制の抜本改革を実施すべきだとの考えを表明した。

 仙谷氏は11年度予算の財源確保について「消費税はもちろん、法人税所得税も新しい発想で臨まなければ(11年度)予算編成が出来ない可能性もある」と指摘した。「人口減少、超高齢化社会の中で、現役世代に大きな負担をかける仕組みはもたない。消費税を20%にしても追いつかない」とも述べ、増大する社会保障費の財源を確保するためには、消費税率の大幅引き上げもやむを得ないとの見方を示した。

 この後、国家戦略相の兼務が決まった仙谷氏は同日、記者団に対し、政府として、今年夏までに、中長期的な財政再建の目標を設定する意向を示した。

(2010年1月6日21時24分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100106-OYT1T01048.htm


 これ自体はもちろん賛成なんだけど、タイミングがあまりに悪すぎる。これでは、大風呂敷の予算を自分で作っておいて何を言っているんだ、という世論の感情的な反発を免れることはできない。

 本来は、消費税の税率引き上げは分配政策とセットで提出しなければいけない。そのことによって、増税が必ずしも負担増ではなく、むしろ将来への不安やリスクを軽減するための有効な手段であることを、国民も実感として理解するようになるのである。

 しかし過去の自民党は、先に増税抜きで大風呂敷の分配をしてから、現実に財政が厳しくなった時に「すいません財源が足りませんでした」と、増税に手をつけようとした結果として、世論の大反発を招いてしまった。今の民主党政権も、過去の自民党と同じ失敗を繰り返しているように思う。

 拒否反応が強い消費税を真っ先に言うのではなく、もっと別のところから攻め口を考えるべきだろう。たとえば所得税の累進率の強化、企業の社会保険の負担引き上げなどを先行させることがそうだし、ネット上の経済論壇で熱狂的に支持されている「インフレターゲット」というのも、その一つかもしれない。いずれにしても、自らが否定してきた消費税引き上げから手をつけようとすれば、さらに最悪の形で挫折を強いられかねない。

 マニフェストを見直して歳出を減らすべきではないかという人もいるが、まったく賛成できない。それは、国民全体が貧乏に耐えろと言っているのに等しい。民主党は大盤振る舞いしすぎとか、「社会主義」とか批判している人までいるけど、現在の日本の少子高齢化に伴うリスクに対応して、国民の生活水準を維持しようとすれば、まだまだ歳出は少なすぎる。発展途上国に毛が生えた程度だと言ってもよいくらいである。


 ちなみに消費税の話をすると逆進性を過剰に問題化する人がすくなくないのだけど、それは徴収の局面だけしか見ていないからである。全体のセーフティネットの設計の中で税制を考えれば、より手厚く分配するためには徴収の効率性がまずもって優先されるべきであって、逆進性はほとんど問題にならないことは明らかだろう。それでも、逆進性がどうのこうのとイチャモンをつける人が後を絶たないのは、徴収されると自分に返ってこない、というイメージがあるからだろう。そういうイメージを深く植えつけてしまった自民党政権の罪は本当に重い。