給食費未納問題の胡散臭さ

給食費を払わない親 ― 名古屋の行政書士 落合健太郎の日記

先日、ある人と話した時に、こんな事を聞かれました。


「おちけんさん、おちけんさんのところは、来年から小学校らしいけど、給食費払うの?」



あぁ、そうですね。
給食費を払わない人がいるのは知っています。

でも、私は払いますよ、絶対に。
それがルールなんですから。

そう答えました。


すると、彼はこういうのです。


「払うな。払ったら負けだよ。全員払わなければ良い。」


給食費を払う人間がいるから、払わない人間が責められるんだ!」



私はつい言葉を失いましたが、
「ルールだから絶対に払う」と言い続けました。

でも、彼が言うには、


「だって、払わなくても食べられるんだよ?払う方がおかしいでしょ。」


 ここまで明け透けな言い方をされるとさすがに唖然とはするし、給食費の未納をよしとするわけでも全くないが、個人的にはそもそもこの問題が大きな社会問題として扱われていること自体が、やはり正直よくわかっていないところがある。

 文科省は昨年11〜12月、給食を実施している全国の国公私立の小中学校計3万1921校を対象に、05年度の給食費の徴収状況などを調べた。

 それによると、43・6%に当たる1万3907の小中学校で給食費の滞納があり、滞納総額は22億2963万円だった。滞納率(本来徴収されるべき給食費に占める滞納額の割合)は0・5%。児童・生徒数では9万8993人だった。

 都道府県別では、沖縄(3・8%)、北海道(1・4%)、宮城(1・1%)、岩手(1・0%)などの滞納率が高かった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20070125ur04.htm


 滞納率が0・5%というのは、200人に1人程度ということで、就学援助制度による免除措置があるとは言え、昨今の貧困問題の報道に接していると意外に少ないという感が強い。22億というととてつもなく大きな額という印象を与えるけど、冷静に考えれば国民一人あたり20円程度である。もちろん「ドンデモ」な親はいるだろうが、社会問題になるほどのものだろうか、というのが正直な印象である。給食費未納問題に胡散臭さを感じているのは、たぶん自分だけではないと思う。

 ただそれ以前の問題として、給食費を一律平等に支払うのがおかしい、というのは前々から感じていたことではある。

 公共的な支出については、より多く負担できる人がより多く負担する、というのが大原則である。そうでなければ、医療費や教育費で国民の半分の家計が破綻してしまうだろうし、結果として公的医療や公教育は崩壊することになることは誰でも理解できるところである*1。ところが給食費については、なぜか未だに全員が一律に負担することになっている。

 給食が個人の選択や趣味嗜好の問題であれば、つまり嫌だったら食べなければいいという選択肢があるのであれば、一人当たりの負担は一律でも構わない。しかし学校給食は、事実上食べないという選択肢がないにも関わらず、一律に負担することになっている。むしろ、ここまで大きなトラブルがなかったことのほうが不思議なくらいである。

 仮に、給食費の未納が深刻な教育行政の財政問題になっているとしても、その具体的な手段はどうであれ、「より多く負担できる人がより多く負担すればいい」という真っ当かつ着実に解決につながる話をしていくべきだろう。しかし現実は、そういう健全な方向に進むのではなく、細かな不正や「無駄遣い」の事例を過大に取り上げて、暗に人々に忍耐を強要するような世論が蔓延している。給食費未納のような些細といってもよい問題が世論のルサンチマンを刺激して、大きな社会問題であるかのように扱われてしまっていること自体が何よりの証拠である。

*1:消費税は一律負担ではないかという反論があるかもしれないが、個人的には消費能力によって負担が異なるので応能負担になっているという立場である。所得税のほうがより応能負担の原則に適っているので、本来ならそのほうが好ましいとは思う。