財政再建目的の増税には反対

いずれにせよ最終的には、政府債務が維持できるかどうかは、大増税(および大幅な歳出削減)が実行できるかどうかという政治的な問題にかかっている。これを実行するには強い政治的リーダーシップと健全な民主主義が必要だが、わずか5%の消費税を上げるか上げないかで話が二転三転するような政府が、税率を30%にできるとは考えにくい。この意味で日本の最大のリスクは、政治の劣化である。国債相場が大きく崩れたときは、もう手遅れだ。増税には時間がかかるので、かなり早めに準備しないと危ない。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51344900.html


経済学的な妥当性は専門家の判断に任せるとして、単に財政再建を目的とした、分配政策とセットではない増税には全く賛成できない。

一言で言えば、増税は国民の生活を「楽にする」ために行わなければならないし、それ以上の目的のために増税を行ってはならないのである。また「楽になった」という実感こそが、増税への国民的なコンセンサスを可能にするのであって、増税してもその多くが国債の返済にまわされ、多くの国民の生活上の苦痛がほとんど軽減されないままだとすれば、ますます増税への拒否反応が強まるだけだろう。

だから国債の返済については、緩やかなインフレと経済成長によって、長い期間をかけて達成していけばいいという主張に賛成している。増税国債を解消しようとするのではなく、増税による分配政策を経済成長につなげて、国債の返済を地道に実現していくという道筋を政治家と専門家は懸命に考えていくべきだと思う。

前にも書いたように、過去の自民党政権の過ちは分配を先にして税負担を後回しにしたために、いざ税負担が必要になったときの国民的な合意の獲得が困難になってしまったことにある。今の民主党政権はこの自民党と同じ過ちを繰り返しており、上記のような財政再建論者も、こうした困難を全く勘案していない点で同罪である。そもそも、増税しなければ国家財政が破綻してしまうぞ、という言明(というか脅し)の前に国民を屈服させようとするのは、それこそ悪い意味での「ナショナリズム」だという気がする。