それでも湯浅氏に与したい

 つまり、製造業派遣を禁止してみても、現実に仕事がない以上は失業がなくなるわけではありません。後の文章を読むと、派遣を禁止すれば派遣で働いていた人が正社員になれるというわけではないことは湯浅さんも(当然ながら)理解しておられるようですが、仮に正社員になったとしても、仕事がなくて需給が崩れている以上はいずれは雇用調整と失業の発生は避けられないわけで、そのスピードが遅くなるという効果しかありません。もちろん、貧困の抑止という意味では雇用調整の速度は速くないほうが望ましいでしょうが、いっぽうで雇用調整の遅れは企業業績の回復の遅れ、ひいては雇用の回復の遅れにもつながるわけで、その得失は微妙なところですし、正社員の解雇が多発するようだと人材育成や技術力向上に大きな影響が出かねません。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20100115

全くの正論だろうけど、過労や貧困の問題の存在そのものについて、つい最近まで(今でも?)否定的だった人が依然として派遣業界の会長を務めている現状では、やはり湯浅氏の「極論」を批判する気には全くなれない。頼れるものが何もないという状況に突け込んで、労働者を安く買い叩くという派遣業界のビジネス手法は、終わりにしなければならないことは間違いない。邪推すれば、湯浅氏は規制強化によって、派遣業界が安楽死していくことを望んでいるのだろうと思う。

 この人は慎重な書き方はしているが、「いまよりもひどくなる」という正論で、現在の悲惨さを放置することを正当化することにもなりかない。ここら辺は、正論を言おうとすると社会的弱者に対して少々「冷徹」なことも言わなければならないという、雇用および貧困問題の専門家のジレンマだろう。