菅直人がここまでひどかったとは

消費増税「鼻血も出ないほど無駄なくした後」 菅財務相
asahi.com 2010年1月21日21時15分
http://www.asahi.com/politics/update/0121/TKY201001210456.html


 菅直人副総理兼財務相は21日の衆院予算委で、増大する社会保障費を賄うための消費税増税について「逆立ちしても鼻血も出ないほど、完全に無駄をなくしたと言えるまで来たとき、必要であれば措置をとる」と述べ、無駄削減を徹底した上で検討する考えを示した。自民党谷垣禎一総裁の質問に答えた。

 消費税をめぐっては、鳩山由紀夫首相が「4年間は引き上げない」と表明している。

 菅氏は答弁で「議論をしないとは首相も含めて言っていない」と強調。高齢化に伴う社会保障費の自然増が毎年約1兆円に上ることから、無駄削減の進展をにらみつつ、増税論議に入りたい考えだ。

 また、麻生前政権などが消費増税に踏み切れなかった理由として「無駄遣いしている政権に増税させたら、もっと無駄遣いするという国民の不信感が最大の理由だ」と指摘した。(北沢卓也)

 これはひどすぎる。菅直人は、もう少し誠実な政治家だと期待していたが・・・。

 財政が厳しいので、これ以上削減するものがないので増税するというのは、最悪の方法である。増税しても物価が上がっただけで生活はちっとも楽になっていない、という税制に対する大きな誤解を延命させるだけである。繰り返すように、税金が上がった結果として生活が楽になったという実感こそが増税への合意を可能にするのであって、国民の生活を楽にしない増税など言語道断である。

 そもそも、「逆立ちしても鼻血も出ない」というのは、相当に行政がボロボロの状態になっているということである。「無駄な医療費」「高すぎる勤務医の給与」という医者へのバッシングが、過労死寸前の病院の職場の状況が認知されることによって収まったように、菅直人はそういう悲惨な状況になるまで放置することを宣言しているわけである。つまり、公務員の職場環境が「ブラック企業」も真っ青なものになり、国民がその悲惨さに同情してようやく負担に応じるようになる、ということを期待しているわけである。もちろん、そのような状況になる前にあらゆる手立てを講じるのが政治の役割のはずで、菅直人の発言は政治倫理の崩壊としか言いようがないだろう。

 本当は、政治学者との付き合いの多いはずの菅直人はわかっているはずだ。増税とは国民の生活を豊かにするための手段であって、それ以上でもそれ以下でもあってもいけない。菅直人は、そういう当たり前のことをストレートに語ることを期待できる政治家の一人だと少しは思っていたのだが、この発言には本当に心の底から失望した。日本の「社民主義」というのは、結局官僚政治批判以上のものではなかったということなのか。