増税しなければいけない理由

消費税率10%超に=財政再建を重視−自民・谷垣氏
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&rel=j7&k=2010012700749


 自民党谷垣禎一総裁は27日午後、東京・内幸町の日本記者クラブで講演し、消費税率について「社会保障に特化してやっていく必要がある。われわれが政権にいた時は10%くらいと考えていたが、社会保障の状況を考えると、もうちょっといくかもしれない」と述べ、10%超への引き上げが必要との認識を示した。
 谷垣氏の発言は、財政再建により将来世代の負担増抑制に取り組む姿勢を強調することで、消費税の議論を先送りしている鳩山政権との違いをアピールする狙いがあるとみられる。
 谷垣氏は「2010年度予算案は(特別会計の)埋蔵金や何やらでつくったが、恒久財源ではない埋蔵金でやるのには限界がある」と、鳩山政権の予算編成を批判。「もうそろそろ消費税を含んだ税制改革に取り組んでいかないといけない」と強調した。 
 一方、夏の参院選比例代表への出馬を目指している山崎拓前副総裁(73)らベテラン組の扱いについては、「70歳定年制」の基準を挙げた上で、「ルールはルール。尻抜けになってはいけない。近々結論を出さなければいけない」と述べ、公認しない方針を近く伝える考えを示した。(2010/01/27-18:02)


 増税しなければいけない理由は、家族や地域あるいは企業によるインフォーマルな社会保障の能力に限界が生じ、それを政府が直接的に担わなければならなくなったためである。家族で行っていた介護の負担が税金や保険料に転嫁されるだけで、負担そのものが増えるわけでは決してない。また市場競争のなかで自らの生活費を全て稼がなければいけないという社会は、明らかに個々の人間に対する負担が大きすぎる。社会のなかで負担を広く薄く分配することによって、基本的な生活コストにおける個人レベルの負担感を減らすのが税金および社会保険の役割である。この中学生でもわかる基本的な原理を、政治家もマスメディアもほとんど語っていない。

 増税すると不況になると言っている人もいるが、それは増税を「財政再建」の文脈だけでしか理解していなくて、分配政策とセットで考えていないからだろう。これは増税を主張する人たちにも大きな責任がある。とにかく、政府の財政が「苦しい」ということばかり語り、その「苦しさ」を国民全体で分かち合おうという言い方をする。しかし、「苦しく」なるような政策を国民が積極的に支持するわけがない。また支持されるとしたら、それは国民が相互に「苦しさ」を強制しあうような、ファシズム的な社会状況になっているとしか言いようがないだろう。

 むしろ、「増税による分配政策で経済を活性化させる」とか、「増税で国民一人あたりの負担を減らすことができる」といった、前向きなことを当たり前に語るべきである。物価が1割上がったとしても、その財源で死ぬほど働かなくても生活できるような、そして医療や介護を家族ですべて抱え込まなくても済むような、そういう社会を構築できるのであれば、それは経済成長のための良好な環境にもなるだろう。

 このような真っ当な考え方を妨げているのは、行政に対する根深い不信感だろう。小泉政権民主党政権も、この不信感を最大限に活用して権力を獲得した。それは理由のないことではないが、それは自分で自分の首を絞めているだけでしかないことを、そろそろ気がつけなければならない。