橋下府政に対する評価

「橋下人気」衰え知らず…支持率83% 高い改革への期待
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20100126-OYO1T00410.htm?from=top


 橋下知事の支持率(83%)を年代別にみると、30歳代の86%がトップで、最も低い40歳代と70歳以上でも各81%に達した。前回調査と比べると、30歳代の支持率が10ポイント伸びた。

 地域別では、大阪市が89%に達した一方、堺市は75%。昨年9月の同市長選で、橋下知事が支援した新人の竹山修身氏が、事実上の与野党相乗りで3選を目指した木原敬介氏を破ったことに対し、しこりが残っているためとみられる。

 支持政党別では、知事選で対立候補を推薦した民主の支持層が89%と、前回より6ポイント上昇。全体の4割強を占める無党派層も83%と前回比で4ポイント増えた。一方、橋下知事を推した自民、公明の支持層では、前回調査と比べ、支持率が1割前後低下していた。

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 大阪市在住の推理作家、有栖川有栖さんの話「橋下知事への期待感は、続いているというより、膨らんでいる。走りながら考えているせいか、言うことがコロコロ変わるが、その臨場感が逆に注目を集める好循環につながっている。ただ、『支持されている自分はすべて正しい』と思い込むと、正しくない方向に進む危険性が潜んでいる」

(2010年1月26日 読売新聞)


 個人的に橋下知事は、今現在思いつく限り最悪の政治家だと思っている*1。彼に比べれば、20年以上居座っているどこかの知事のほうがはるかにましである。少し古いが、以下の記事を読めば、彼がめちゃくちゃな政治家であることは明らかである。

 府民生活のセーフティーネット(安全網)関連では▽高齢者、障害者、乳幼児らが一定額を負担すれば診療を受けられる医療費助成で、診療費の1割の自己負担を求めるなどして13億円削減▽私学の経常費助成は小・中学校30%、高校・幼稚園10%カットして38億円減額▽救命救急センターへの運営負担補助金の2億4500万円削減▽警察官の520人削減――などが盛り込まれた。

 公共事業では、大規模ニュータウン箕面森町(箕面市)の公園整備などを凍結。人件費はPTが教員や警察官も含め給与の平均10%カットを想定しているが、試案の中では総額の明記にとどめ、職員組合との交渉で詰めていく。市町村への補助金交付金は45億円減額で、公立小学校への警備員配置事業なども含まれる。

 廃止する府立施設・出資法人は、体育会館(大阪市浪速区)、国際児童文学館吹田市)など。

 PTは、09、10両年度も、08年度同様の事業見直しで1060億円〜1210億円の削減を行う考え。試案には、小学校低学年の35人学級など、09年度に廃止する事業も含まれている。

http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/100204/20100204028.html

 教育や医療など、現在でも財源不足で悲鳴を上げ、大量の中退者や過剰労働の問題で悩まされ、そして社会的に弱い立場の人間ほど必要としている分野の予算を大幅に削減しているのに、「財政を立て直した」と評価されているだから最悪である*2。財政のつじつまが合って喜んでいい人間がいるとしたら、それは現場の官僚だけだ。要するに、橋下もそれを支持する世論も、官僚以上に官僚主義精神の塊なのである*3

 戦争でも革命でも、何かがラディカルに進んでいるときは、「将来がよくなるのでは」という期待感が膨れがっているので、足元の社会の矛盾に目が向けられることは乏しい。しかし、熱狂が終わって地に足を着いた政治をやろうとすると、現実の問題点が途端に噴出して急激な失望感へと変わっていく。「小泉改革」以降の三人の首相の直面した困難は、まさにこれであった。

 橋下のやろうとしているのは、「財政危機」を連呼することによって行政を縮小して分配を削減すること、そして削減した分は「開発」の投資に回すというものである。過去の自民党のような、「構造改革」と公共事業政治がワンセットになったようなった手法である。橋下はシンガポールを目指しているらしいが、自民党政治がそうであったように、結局一部の利害関係者が潤うようなものにしかならないだろう。

 2年経っても知事の支持率が8割強というのは、独裁国家でもない限り有り得ないことで、もはや民主主義の崩壊現象としか言いようがない。政治は必然的にある種の「敵」を作り出す営みであり、橋下のような「改革」を遂行すればとりわけそうであるはずなのにも関わらず、それがまったく公に可視化されていないのは異常事態である*4。誰がなんと言おうと、橋下府政は自由や民主主義の名の下において否定されるべき政治である。

*1:「最悪」というのは「人気が高い」ことを込みで言っている。

*2:緊縮財政の問題点を理解しているまでが、これに理解を示すことがあるのはまったく不可解である。

*3:人員や歳出の削減を「改革」と称する人たちに「脱藩官僚」が多いのは、この意味で偶然ではないと思う。

*4:逆に言うと、支持率が2割程度であれば本当に地に足の着いた「改革」をやろうとしていると考えていいかもしれない。