既得権者の「改革」

 日本の政治風景で非常に不思議なのは、世界的には既に学者から国家の元首にいたるまで大きな批判にさらされてる、規制緩和・民営化の「構造改革」的な政策が、依然として根強い支持があることである。大阪府橋下知事とか、最近支持率を伸ばしている「みんなの党」などがそうである。

 勘違いしている人が多いが、こういう改革路線を熱心に支持しているのは、団塊世代を中心とした高齢層=旧中間層が自らの既得権を必死で維持するという関心からである。つまり、医療・年金が危機に陥っているのは、官僚・公務員が「ぬるま湯体質」で真面目に仕事をしていないからだ、そして経済が不調なのは若い世代が(自分たちの若い頃のように)もっと死ぬ気で懸命に仕事をしていないからというわけである。もっと露骨に言えば、「官僚の既得権」や「だらしない若者」によって、自分たちの老後の生活が不安にさらされるなどとんでもない、というそういう心性なのである。「民営化」を支持するのは、選択の自由と多様性からではなく、競争原理によって官僚と公務員が必死で仕事してくれるようになる、という以上の意味はない。だからこの世代は一方では、北欧的な「福祉国家」を目指すべきだなどとも漠然と考えていたりもしているわけである。

 既得権者がラディカルな改革を支持するというのは、政治状況によっていくらでもありうる事で、別に不思議なことでも何でもない。また政治家が何らかの既得権を代表することは、民主主義である限り当然のことである。ただ、「既得権」を解体しているつもりでいる政治家たちに強い憤りを感じるだけである。