経営者が一番経済をわかっていない

ちきりんの知る限り、このことを一番よく言われるのはセブンイレブンCEOの鈴木敏文氏だ。「売れないのは、客が本当に欲しいと思うモノを我々が提供できてないからだ」と繰り返しおっしゃってます。ユニクロの柳井社長も時々同趣旨の発言をされる。買わない客がおかしいのではなく、供給者側が客の望むモノを見いだせていない、提供できていないから売れないのだ、というのがこれらの経営者の一貫した視点のもちかただ。

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100512

 労働者を安い賃金で目一杯働かせるような産業が、今日本では「成功」を収めていると言われているが、これは根本的に問題があると思う。

 単にデフレを悪化させているというだけではなくて、組織そののもの効率性を高めるとか、新規産業を開拓しようとかいうモチベーションが、著しく削がれているのである。

 日本で「イノベーション」を呼号している経営者はいくらでもいる。ではそういう人が何をやっているかと言えば、携帯やアパレル関係、外食産業、さらに介護といった、既に市場が飽和しているとしか言いようのない分野への新規参入である。こうなってしまうのは、安い労働者をいくらでも調達できて、十分とは言えないまでも確実に利益が上がるからである。

 「福祉国家」の思想は、別に社会的弱者を助けましょうという善意から出てきたわけではなくて、貧困や低所得を放置していると経済の生産性や効率性が低下し、消費も冷え込んでしまうするという、優れて経済学的な理解に基づいたものでもある。

 経営者の精神論や細かなテクニックの関する話で経済を理解した気になっている人が多いが、実のところ経営者が一番経済をわかっていないような気がする。