民間企業は「貧乏人を相手に商売」しないこと

「「社会保障で成長」は誤り」鈴木亘学習院大学教授
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20100520#p1


 福祉は「経済成長」にとって絶対に不可欠であると言う主張に、私は全面的に賛成している。しかし断っておかなければならないが、民主党も勘違いしているのは、福祉は断じて「成長産業」にはならないことである。福祉の経済成長に対する寄与はあくまで側面的なものである。「経済成長」は基本的に市場が牽引するのだが、その市場を健全に機能させるためには、公的な社会的保障の側面的な支援が絶対に必要だというだけの話である。

 今の日本の最大の問題点は、民間企業が「貧乏人を相手に商売している」ことにあると考えている。テレビを観ていたら、元保険会社のセールスマンだったというお婆さんが、「金持ちだけを相手にして儲けた。貧乏人は相手にしなかった」とカラカラと笑っていたが、これが民間企業家のあるべき姿であると思う。「貧乏人」を相手にする商売は、どうしても低価格競争や低賃金競争になって、デフレスパイラルを悪化させる要因になる。それを防ぐためには、無理して低賃金労働に就かなくても、そして1円でも安いものに飛びつかなくても、国民の生活が十分に成り立つようにしなければならない。

 そのためには、「貧乏人」には税と社会保険を通じた政府の再分配政策を、「金持ち」には民間企業による市場競争を、という棲み分けがきわめて重要になる。鈴木亘氏は、福祉分野の民営化で財政の健全化が図れると考えているようだが、これはやはり民間企業に「貧乏人を相手に商売」させてしまうことであって、「福祉は成長分野」という民主党以上の勘違いを犯していると言うべきだろう。