何をいまさら

政府、新規採用公務員4割減を決定 MNS産経ニュース
 2010.5.21 16:27
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100521/plc1005211628013-n1.htm


 政府は21日の閣議で、平成23年度の一般職国家公務員の新規採用を21年度(7845人)比で39%減の4783人にする方針を決定した。鳩山由紀夫首相は先月、衆院選マニフェスト政権公約)で掲げた国家公務員人件費2割削減のため新規採用の半減を指示したが、省庁側の反対に配慮した結果、4割となった。

 国民の安全確保のため、国土交通省が削減に反対した海上保安官航空管制官は対象から除外。法務省が求めた刑務官や入管職員の削減目標の緩和も認めた。原口一博総務相は21日の記者会見で、「国の出先機関をなくそうとしているのに去年と同数を採用することはおかしい」と強調した。

 ただ、国家公務員全体の採用試験を行う人事院は戸惑いを隠せない。首相が新規採用抑制方針を示した4月27日の時点で、I種(キャリア官僚)、II種、労働基準監督官や国税専門官などの専門職の応募はすでに締め切られ、人事院は種別の予想採用者数をホームページ上で告知済みだった。

 このため、受験生らから人事院に問い合わせが殺到。人事院は「政府から採用抑制方針について事前に一切連絡がなかった」(幹部)と不満を漏らしている。

 公務員を減らせという主張は、基本的に「トンデモ」の類だと思っている。公務員を減らすべきであることの合理的な根拠を、いままで一度たりとも聞いたことがない。医療費や法人税では「国際比較」のパネルが瞬時に出てくるのに、公務員数が出てきたことは見たことがない。日本では公共的な業務にこれだけの仕事が必要で、だから公務員はこれだけの規模が適切だ、ということを説得的に説明した議論がまったくない。逆に、「税収よりも多い公務員の人件費!」などという、反論する気力も起きないような、どうしようもない議論ばかりが横行している。

 採用減について、民主党を今になって批判している人がいるが、人件費を減らそうとすれば、まずコストのかからない新規採用減によって対応するのは官でも民でも当たり前のことで、公務員削減論に同調してきた人全員が同罪であると言うべきだ。「脱官僚」や行政の効率化と人件費の削減は基本的に別の話であるという、至極当たり前のことを言ってきた人は、少なくとも政治家やマスメディアでは一人もいない*1

 「天下り」にしても、なるべくないほうが良いとして、その先どうなるのかの見通しを示した人は誰もいない。テレビ局や新聞社のような大組織は、それこそ「天下り」を撤廃することの難しさや、それを撤廃したときの副作用を熟知しているはずなのだが、全て他人事のように批判してきた。そのことについて、ブログ論壇を含めて誰も突っ込んでこなかった。だから、今回のような結果になってはじめて民主党を批判している人たちには、「何をいまさら」と非常に腹立たしいものを感じる。

 公務員削減論が心底「狂っている」と思っているのは、果たして自分だけだろうか。そうではない良識派が必ずどこかにいると信じたい。

*1:当たり前だが、行政の非効率性は人が多すぎることにによっても起こるが、少なすぎることによっても起こる。旧社会保険庁の問題は、完全に後者の問題だったと思う。