共感せずにはいられない

 鳩山首相が辞任したが、保守派のよくある物言いになるけど、やはり最近の「民主主義」はどうも単なる無責任な好感度調査に成り果てている気がする。

まず理念や利害によって自発的に組織された団体・集団に個人が参加し、そうした理念や利害を代表する政治家を選出するというプロセスがあれば、個々の不祥事や不手際で、ましてや「決断力のなさ」で支持率が急落するということは有り得ない。そもそも、そういう政治家を選んだ自らの責任というのがある。

 ところが今の日本では、自ら選挙で選んだはずの政権に対して、「こんなはずじゃなかった」という愚痴ばかりしか言っていない。普天間問題についても、沖縄の負担軽減を本当に考えているのなら、少しでも前に進むような建設的な批判をすべきなのに、「決断力がない」「一貫性がない」の大合唱しかなかった。しかし、周囲が期待したとおり「一貫性」を発揮した社民党は、事態の前進に何も貢献せず、むしろ停滞させてしまっただけだった。

 民主主義社会というのは、国民一人ひとりが政治家や官僚が日々どのような困難に直面しているのか、いざ自分が政治を担ったら同じ過ちを踏まないと言えるのかの想像力を働かせることのはずなのだが、サッカー代表の監督の采配を批判するのと同じ調子で、政治家や官僚が批判されている。実際聞いていても、「岡田やめろ」と「鳩山やめろ」との質的な違いが、何一つ感じられなかった。

 民主党政権が誕生したきっかけかは、一つには郵政民営化などそれ以前の市場主義へ批判にあったはずだが、いざ分配政策を行うと「バラマキ」だと批判され、郵政を以前に戻そうとすると「逆行」とバッシングされ*1、じゃあ分配の原資は消費税でというと、それも「無責任」「まず無駄の撲滅」と言われてしまう。首相は「国民の皆さんが聞く耳を持たなくなってしまった」と言ったが、首相が言うべき言葉ではないとしても、そして大部分は自らの責任であるとしても、やはり共感せずにはいられない。

(追記)
 みんなは民主党に何を期待してたんだが、さっぱりわからない。厳しい財政なんだからみんな我慢しろ、バラマキやめろ、公務員は安い給料でもがんばって働け、民間企業のがんばりに見習えって?そういう思考様式こそが「社会主義」「全体主義」と呼ぶにふさわしいのだけど、歴史から何を学んでいるのだろうか*2菅直人は信用できない部分も多い人だが、経済学者やエコノミストにどんなに馬鹿にされても(実際、あんな難しいことを考えている人が、税金の話なると途端に馬鹿になるのが不思議だ)、「増税による再分配は市場を活性化して経済成長を下支えする」という正論を、とことん粘り強く言い続けてほしい。

*1:今回の郵政改革法案は私も疑問だけど、「逆行」という言葉を連発して批判した気になっている人たちにはやはり納得できない。

*2:さっき、テレビで「財政再建に成功した町」が紹介されて民主党が批判されていたが、この町の頑張りを見習えば財政再建できるみたいな言い方に、「全体主義」的なものを感じるのは私だけだろうか。経済学が好きな部分があるとすると、こういう「頑張り主義」的な考え方を徹底排除するところにあるのだが(社会学者や政治学者は結構やってしまう)、密輸入するような人も結構多い。