最近の財政政策動向

 最近の財政政策の動向のメモ書き。


1)構造改革
 民営化と規制緩和を徹底化し、官僚・公務員など公共セクターの雇用を大幅に削減することによって、企業と労働者の生産性を向上させることができれば、増税しなくても経済成長によって健全財政が可能であるという立場。


2)財政再建
 少子高齢化赤字国債の膨張による財政危機が、最終的に国債価格の下落を招いて財政破綻を導くという懸念から、消費税を中心とした増税によって毎年増え続ける社会保障費の財源を捻出し、財政危機を乗り切ろうとする立場。


3)福祉国家
 税を再分配の手段として積極的に活用し、介護などの雇用を創出したり、セーフティネットの構築による「安心社会」を整備したりすることで、国民の需要を喚起すれば堅実な経済成長を実現できるという立場。


4)脱デフレ派
 経済のデフレ状況が、日本の経済と社会保障の問題の根源的な原因であるという認識に立った上で、「インフレ目標」政策で人為的にインフレを起こすことで安定した経済成長が実現し、雇用も充実して、赤字国債も自然に目減りしていくことが期待できるという立場。


5)財政出動
 今は赤字国債を増やしてでも、公共事業などで需要を創出して経済の安定的な成長につなげようという立場。


 どの立場をとるかというよりも、組み合わせが重要である。今のところ財政再建派が中心となり、それに福祉国家派が共闘している感じだが、同床異夢という気がしてならない。ネット上の経済論壇では圧倒的人気の脱デフレ派だが、みんなの党亀井静香がこの立場に好意的であるように、その中には構造改革派に近い人もいれば財政出動派もいる。個人的には、「市場原理主義」に批判的な層と、「バラマキ財政」に批判的な層とが(おおむねかぶっていることも多いが)、同時に脱デフレ派に不信の目を向けてしまっているような現状があるように思われる。とくに、ここのところ亀井が脱デフレ派に接近して日銀を激しく批判していたので、ネガティヴなイメージが少しばかり強まってしまっているかもしれない。

 それにしても財政再建派がこんなに人気なのはどうしてなんだろうか。経済を知らないという以前に、「財政危機」「税金の無駄遣い」に過剰反応する一方で、需要の創出に対する国民世論の反応が鈍い、ということなんだと思うのだが、また後で考えてみたい。

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 個人的には福祉国家派と脱デフレ派の共闘がベストだと考えている。今のような財政再建派と福祉国家派の共闘は、単に限られた財源を高齢者福祉に回すという結論にしかならない。財政再建派はまさに日本政治のガンとしか言いようがないが、個々人の主張については極めて生真面目なので、亀井静香などとは違って、なかなか反論しにくい雰囲気がある。

 利権誘導型の政治家の影が薄くなったのはいいことだとして、同時に愛嬌やユーモアのある政治家も減っている気がするのだが、見てて息苦しい気がするのは自分だけだろうか*1。どう見ても、今の政治家たちは物事を深刻に考えすぎている。そして、そのように深刻かつ生真面目に振舞う政治家が、国民から支持されている傾向がある。「国の借金は言われているほど大したことない」というのは多くの専門家も言っていることだが、それを言うと厳しく叱られそうな雰囲気である。

 そうした雰囲気は、官僚・公務員へのルサンチマンや、派遣村生活保護受給者へのバッシングなどとも、ゆるやかにつながっている。少しくらい無駄や間違いがあったっていいじゃないか、自分だって偉そうに口をきける身分じゃないんだから、というおおらかさの中から、「経済成長」も「安心社会」も出てくるのだと思うのだが(ギリシアは行き過ぎだとしても)、どうなんだろうか。

*1:国民新党がどうしても嫌いになれないのはこの点である。