みんなの党の緊縮財政予算案

みんなの党、予算修正案まとめる 行革で歳出大幅カット2011.2.25 19:15


 みんなの党は25日、子ども手当廃止や国会議員と公務員の人件費削減などで歳出を大幅にカットした平成23年度予算案と予算関連法案の修正案を発表した。政府案が一般会計総額92兆4千億円に対し59兆8千億円の緊縮予算で、国債発行額も政府案の44兆3千億円に対し17兆7千億円に縮減した。現行40%の法人税率を20%まで引き下げて経済成長を目指す。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110225/stt11022519160009-n1.htm


 経済学系の人に絶大な人気がある「みんなの党」は、批判的な自分も「経済通」ではあるのだろうと評価してきたのだが、この与謝野馨も顔負けの緊縮財政路線には流石に驚いた。

 デフレ不況が継続している状況下で、この強硬タカ派の緊縮財政路線は、いったい経済学的にどう正当化されるのだろうか。もちろん、ブレーンの高橋洋一氏が根拠もなくこうした超タカ派緊縮財政路線を提示しているとは思われないので、おそらく自分が無知・無理解なだけなのだろうと思う。デフレ不況下の、実に30兆規模の大規模な歳出削減や民営化で経済成長が実現できる、というのは一体どういう理論や理屈に基づいているのか。「みんなの党」を支持している経済学系の人たちの解説をぜひとも聞きたい。

 これを「世論向けの方便」だという人がいるとしたら、政治というものを甘く見すぎであると思う。政党や政治家が自ら語ったことに拘束され続けることは、「マニフェスト」の後始末に終始している今の民主党を見れば歴然としている。

(追記)

 記事を読み返したら、なぜだか「70兆」に誤植していたので、「30兆」に訂正しました。誤植が多いのは今にはじまったことじゃないんですが・・・。

 自分も、経済政策では組んでもいいんじゃないかと思っていた時期もあったので、これにはさすがに失望している。近年支持を伸ばしている、政界のキャスティングボードを握ろうかという、しかもついこないだまで政権内にいた人たちによって構成されている政党が、こういう「予算案」を平然と提示できてしまうのは、さすがに日本の政治も末期症状としか言いようがないと思う。

(柿沢議員の反論)

 このエントリへの批判かどうかは定かではないのですが、ブックマークで紹介されていた、柿沢未途議員のツイートを貼っておきます。

 「緊縮予算」と書かれているが、歳出規模の縮小は消費税を全額地方財源として、子ども手当の支給等を地方の自主性に任せて予算から削除したため。また、借金返済のために10兆円の借金をしている国債整理基金特別会計の定率繰り入れを停止する事で不用な国債新発額の膨張を防いでいるだけ。

約14時間前 twiccaから
http://twitter.com/310kakizawa/status/41316750603726848

 専門家の解説を待ちたいところだけど、素人勉強的には、財源の地方分権化で、経済的な力の乏しい県の財政赤字がとんでもないことになりそうな気がすることと、定率繰り入れ停止なんかしたら国債金利が上がったりしないのか、という疑問があったりする。そして、それを差し引いても、この「予算案」が「緊縮財政」路線であることは、やはり否定できないと思う。そもそも、(前の衆院選の時は賛成していたはずの)子ども手当てを「バラマキ」だとか反対しているわけであるし。


みんなの党の予算案公開)

 ついにみんなの党の「予算案」の詳細が公開され、財政の専門家?の方が解説(というか罵倒)していた。

みんなの党の予算w案  what_a_dudeの日記

http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20110301/p1


 自分は「トンデモ」という言葉をあまり使いたくないが、さすがにこれを「トンデモ」と言わなければ、世の中はすべて真っ当なことばかりということになるだろうと思う。

 何がトンデモかといえば、予算の下で膨大な人間が生きている(だからこそ簡単に減らせない)という現実に向き合おうとせず、計算ソフトを使って辻褄が合えばそれでOKという、ヴェーバーも生きていたら卒倒するような超官僚主義的精神である。実際みんなの党は、政策理念を真正面から問うことから逃げて、公務員の給与水準がどうのこうのとか、官僚の手口がどうのこうのとか、「官僚的」なことばかり言っている。財務官僚を激しく攻撃している政党自身が、その精神においてより徹底した財務官僚であることがよくわかる。

 もしこれが、「無駄遣いを減らして俺たちの年金を救え」「若い連中へ分配するなんて甘やかしだ」という(さすがに全てではないが)高齢世代の票をつるための確信的詐欺だというなら最悪である。しかし、やはり最も憤りを感じるのは、こういう明らかに餓死者や自殺者が激増しそうな政策をちゃんと批判しようともせず、(一方は世論迎合のため、他方は視野狭窄な政策論のために)放置して風見鶏を決め込んでいる専門家たちである。

(愚痴)

 それにしても、与謝野氏周辺や日銀・財務省周辺がやることはみんな「詐欺」で、みんなの党周辺がやっていることは、「みんなわかってやっている」「真意はちがうところにある」というのは、さすがに頭がおかしいとしか言いようがない。これは、かつての極左新興宗教信者の精神構造とほとんど同じだろう。

 みんなの党のような振る舞いを放置し、結果的に是認していることで、議論の信憑性がどんどん下がってしまい、好意的な観察者、心情的支持者がどんどんいなくなる。そうなると、ますます内輪にしか通じないような論理や言葉遣いが横行し、それでも良いと開き直る。本当にかつての新左翼を見ているようだ。

 そもそも「政府に民間企業の経営感覚が足りない」などと、クルーグマンが第一声で全否定している物言いを性懲りもなく繰り返しているみんなの党に、クルーグマン愛読者たちが好意的であるのが未だによくわかっていない。素人勉強でも疑問だらけのことが多かったが、今回完全に馬脚を現してしまったと言えるだろう。