働ける被災者に仕事を

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 最近は被災地の自治体の首長も、「今一番何が欲しいですか」と問われると、「働ける被災者に仕事を」と答えるようになっている。遅ればせながら、関西大学の永松伸吾氏のキャッシュ・フォー・ワーク(CFW)事業に関する文章を色々読んでいる。震災直後から話題になっていたCFW事業であるが、その頃は雇用の話はまだ時期尚早と、勝手に禁欲していたところがあった。

 細かい問題は永松氏などが既に詳細に論じているので敢えて立ち入らないが*1、復旧作業をどういう形でやるべきかについて、民間企業、行政、ボランティアそれぞれの役割と限界を踏まえてよく考え抜かれており、まず仕事という場を通じて地域の「社会関係資本」(湯浅誠氏の言うところの「溜め」)を再建することが、人々にやりがいや生きがいを与え、真の自立的な復興を可能にするという理念には深く共感できるところがある。

 今回のような大災害は、ややもすると「被災者」とそれ以外の「恵まれた人」という二分法を強化し、この数年の間ようやく声を上げるようになった、その中間にいる失業者や「ワーキングプア」の存在を不可視化してしまう危険性がある。また、実際そうなりつつあるようにも思われる。そうしないためにも、雇用の問題がこれから震災復興の前面に出る必要がある。

 いまのところCFWはみんなの党が積極的で、既に政府も一定程度取り入れているようだが、現段階でどの程度まで進んでいるのか、ネットやテレビの情報だけではよく分からない。むしろ最近なって情報が減っているような印象もある。いずれにしても、「頑張ってください」と義捐金を送るだけではなく、真に頑張るための社会的な環境整備がこれから鍵になるものと思われる。