持続不可能な社会保障

日銀がデフレ脱出に積極的ではない理由 ― 常夏島日記

http://d.hatena.ne.jp/potato_gnocchi/20100814/p1

 この記事に関連して、金融政策論争はさておき、社会保障制度を持続可能にする「ボーリングの一番ピン」が、若い世代向けの教育、雇用保障、家族支援にあるという単純なことを、繰り返し言いつづけるしかないと思う。

 今の日本の社会保障制度への不安の根源にあるのは、若い世代が健康保険や年金を満足に払えないこと、そして収入の問題から結婚が難しいために少子化が進むことにある。ところが教育や雇用に関する支援は、民主党政権になってもさほど充実していないばかりか、「税金の無駄遣い」の名の下に削減されている部分も多い。その最たるものが、この就職難のなかで公務員の新規採用を大幅に減らし、雇用不安をいたずらに悪化させていることである。教育や雇用への支出を抑制して、その分を社会保障の財源に回そうとしているのだが、これはまさに「持続不可能な社会保障」の道を、全力で突き進んでいるとしか言いようがないだろう。

 例えば、年金を安心できるようにするためには、税金の無駄遣いの削減とか、消費税増税で財源をまかなうとか、あるいは積み立て方式など制度を細かくいじくるとかではなく、まずは若年世代が年金を安定して支払えるように、雇用を充実させることが第一である。もし金融政策によるインフレが雇用充実の一つの手段であるとすれば、年金生活者がこれを支持しない理由は(短期的に損をするとしても)ないはずで、そのことを粘り強く説得しつづけるしかない。

 そもそも雇用の充実・安定は社会保障の出発点であるはずなのだが、こうした理解を妨げている最大の壁の一つは、「税金の無駄遣いが自分たちの社会保障の不安を招いている」という、高齢層に広く蔓延している(今もなお拡大している)観念であろう。これは、民主党自身が煽ってきたところもあるので、非常に難しいところであるが。