2010-01-01から1年間の記事一覧

単純な所得再分配は反福祉国家的

ミネラルウォーターと保育園 鈴木亘http://synodos.livedoor.biz/archives/1498293.html 鈴木氏のような立論に対してよく感じる違和感の一つは、貧困者や身障者への対策の話になると、「それは別の対応をすればいい」「いくらでも保障の方法がある」という言…

「新自由主義」について

高橋洋一氏のつぶやき文章をたまたま見つけたので、これをネタに「新自由主義」について。 よく誤解されるけど新自由主義者って。私は、給付付き税額控除・所得税ベースで所得再分配(最高税率上げ+相続税強化)を政策としてあげているから、これらをいうと…

持続不可能な社会保障

日銀がデフレ脱出に積極的ではない理由 ― 常夏島日記http://d.hatena.ne.jp/potato_gnocchi/20100814/p1 この記事に関連して、金融政策論争はさておき、社会保障制度を持続可能にする「ボーリングの一番ピン」が、若い世代向けの教育、雇用保障、家族支援に…

データと実感の間にあるもの

前回の補足。 前回のエントリの趣旨は、国際比較で公務員の数が多いとか少ないとか、給与水準が高いとか低いとか、そういう類の議論そのものに疑問を呈したことにある。むしろ問題関心は、そもそもデータとしては明白なまでの「小さな政府」なのに、どうして…

データ的には「小さな政府」という謎

OECD諸国の公務員数 ― 社会実情データ図録 http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/5192.html 日本はここで掲げられたOECD26カ国の中で最も少ない5.3%である(働くものの5.3%が公務員)。OECD26カ国の平均は14.3%であるので、日本は先進国平均の4割以下の水準の…

不勉強なだけかもしれないが

金融政策も再分配政策の一種だという主張をどこかで見かけたのだが、さすがに驚いた。自分の乏しい経済学の理解では、金融政策によって起こるのは、預金や資産を溜め込んでいる人から、どんどんお金を遣って投資や消費をしたいという人にお金が流れることで…

不明高齢者問題の背景

「でたらめ長寿国」韓国メディア報道 2010年8月5日(木)08:00 http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20100805109.html 【ソウル=水沼啓子】日本で100歳以上の所在不明が相次いでいる問題について、韓国メディアは「でたらめ長寿国」などと相…

「かわいそう」という感情を抑えきれない

「不明100歳超」拡大、把握は困難? ずさん? http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/423861/ 役所が「存命」としながら、実は長期にわたって所在不明となっている100歳以上の高齢者が全国で相次いで確認されている。東京都で113歳の…

税は信頼の問題

増税を通じた再分配が可能になるかどうかは、行政がそれなりに公正に分配してくれるかどうか、そして分配された金銭や財が見知らぬ人の手に渡って、それがどのように使われようが気にしないという、「信頼」の問題が全てである。ちなみに、ここでいう「信頼…

ねじれた構造

渡辺氏トップ、首相は2位=自民は小泉氏が上位−次期首相候補 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&rel=j7&k=2010072300643 時事通信社が16〜19日に実施した世論調査で「次期首相にふさわしい人物」を聞いたところ、みんなの党の渡辺喜美代表が11.4%…

年長世代の「小さな政府」志向

橋下大阪府知事にせよ「みんなの党」にせよ、近年支持が高い政治家や政党に共通しているのは、ラディカルな「小さな政府」路線であることである。「小さな政府」を掲げる政治家や政党がいること自体は、むしろ必要かつ重要なことだが、気になるのは彼らが支…

「大きな政府」なんてできるわけない?

なんか、日本で北欧型の「大きな政府」なんてできるわけない、みたいな批判が相変わらずある。しかし、やたらにフィンランドやスウェーデンを賞賛する人(あるいは無意味に批判したがる人)もいないわけではないけど*1、まあ現実的に思考している福祉の専門…

日本ではもう不可能なのか

「郵政解散選挙」以来、いかに「既得権益層」を歯切れよく攻撃しているかが、政権と政党の支持率に直結しているようになっている。最近の政治家は、冗談ひとつ言わず、生真面目な顔つきで「無駄を徹底的に削減して国民の皆様に納得していただく」などと、過…

今日選挙

自分が増税すべきという場合、現状において民間企業や家族に委ねられている福祉に関する財の配分を、政府で回すようにしたほうが、みんなの負担が全体として減るだろうという、ただそれだけの理屈である。経済成長で税収を上げれば社会保障の財源は問題ない…

なぜ民主主義は間違った政策を選択するのか

『選挙の経済学』(ブライアン・カプラン)という本を斜め読みしていて(頭の悪い自分には結構難しかったが)、なかなか面白いと思った一方で、根本的な違和感があった。それは、著者の経済学至上主義的な結論ではなく*1、「民主主義は正しい政策を導く」と…

絶対にしてはならない反論

これは反省を含めて最近すごく思うことなのだが、議論の中で「誰がそんなこといった?」「まずちゃんと理解してから批判しろ!」という「反論」は、絶対にしてはならないことである。 「誤解」を招いていること自体は、反論相手がどれほど愚劣であろうと、ど…

現代日本の「感謝」はどうも息苦しい

「感謝ソング」が流行っているという話を前に少し書いたことがあるが、思うに「感謝」の気持というのは、現状がある程度「うまくいっている」人じゃないと湧いてこないのではないだろうか。というか、明らかに「うまくいっていない」人が、他人や社会に「感…

当面は「大きな政府」を目指すしかない

「大きな政府」「小さな政府」について語る人のなかに、相変わらず政府の規制や指導が強いか弱いかという、致命的な誤解が多い。政府の再分配が量的に多い、あるいは公共部門で働く労働者が多いということが「大きな政府」だとすれば、経済規制緩和とは全く…

今の増税論議は最低最悪

最近の菅直人は財政再建主義的な主張に堕落してしまっている。「堕落」というのは、素人の納得感を最も得やすい物言いに菅が安易に乗っかりはじめているということである。 現在福祉は、民間企業、家族、個人の負担に委ねられている部分が多く、それが給付と…

「議員や官僚が血を流せ」のお上意識

「国民に負担を求める前に議員や官僚が血を流せ」と言う人がしばしばいるが、これは統治する人たちが完全な特権階級である封建社会でのみ通用する物言いで、ともかくも選挙で選ばれた代表である議員や、国家・社会を運営する専門家である官僚を減らせば、か…

さっさと破綻してもらったほうがいい

消費税増税を世論の逆風の中で何年も前から言い続けている人はまだいいとして、本当に反吐が出るのは、ついこの間まで「徹底的に無駄を削らなければ国民は納得しない」と言っていた連中である。こういう連中は、「利権の構造」をテレビで事細かに解説して政…

とりあえず今の主張

1)財政再建は第一義的には「経済成長」で解決すべきで、増税とくに消費税で解決すべきではない。「経済成長」の手段は専門家に任せるしかないが、今のところ「インフレ目標」政策が比較的説得力があるように思う。 2)高齢者福祉への緊急財源は、所得税累進…

こちらが馬鹿なだけ?

本当に頭が痛いなあ・・・。 増税するというのは、民間企業やNPO・ボランティアが対処できない人たちへの資源配分の手段であって、増税しないというのはそうした人たちへの資源配分を(少なくとも当面は)しなくてもよい、福祉や教育は頑張って自分でお金…

少し逆進的であるくらいのほうがいい

税は担税力の高いところから真っ先に徴収すべきだという意見が強いのだが、自分は若干違う意見を持っている。それは、担税力を前提としつつも、日本社会で生活・活動している人が可能な限り等しく負担するような制度にすべきだ、ということである。 税が単純…

何を考えているかがよくわからない

小野善康氏がネット上の経済論壇でボロクソに叩かれているけど、小野氏の経済理論がそのまま明日にでも実行されるというのならともかく、そんなことはまずない(有り得ない)し、2年間は消費税が上がらないことは確実だし、「今は供給側ではなく需要増が大…

国民のほうが財政危機をわかっている??

先日、ある「政治評論家」が消費税増税に賛成する世論を見て、「国民のほうが財政の危機的状況をよくわかっている。バラマキ政策に乗るほど国民はバカではない」と論評していたが、聞いてて非常に腹が立ってきた。 もし世論が「財政危機だからしょうがない、…

右翼と財政再建主義

財政再建論者である与謝野馨が右派政党である「たちあがれ日本」に参加したのは、最初は意味がよくわからなかったのだが、考えてみると財政再建優先主義というのは、「国家」という有機体の生存が個々人の生存に優先されるべき、という点で右翼に通じるもの…

消費税を選挙の争点にするな

消費税で菅首相「早くて2、3年かかる」 http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp3-20100622-644300.html 菅直人首相(63)は21日午後、官邸で記者会見し、財政再建のための消費税率引き上げ時期について「早くても2、3年、もう少しかかる…

逆進的でも累進的でもどうでもいい

消費税が逆進的だとか何だとか、つまらない批判が多すぎだと思う。高所得者の負担を増やすことに異論はないし、現行の財政再建主義的増税論も断固反対だが、今の反消費税増税論者の議論もおよそ納得できるものではない。 私に言わせれば、逆進的であるという…

今は財政再建などをやっている場合ではない

昔から消費税増税には賛成の立場だったのだが、現状は思い描いた通りになっていないどころか、むしろ真逆とも言える方向になっているので、一言(ではすまなくなったのだが)書いておきたい。 増税しても負担は増えない 税は、医療・介護・年金・育児・教育…